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2020.04.09

桜の名所に人がたくさん来ている、という記事を見ました。
こんなに家にいてくださいと言われているのに。

私の好きな山本沖子という人の「春」という詩です。

     
          春

    田舎の家の居間の鏡が郵便小包で送られてきた。窓の
   外の草むらと白い花と、そして、ブランコをうつしたま
   ま。
    鏡のなかのブランコが、かすかにゆれている。
    風が吹いているらしい。

私はこの詩を読むと、原発の事故で故郷に帰れなくなった人たちのことを思います。
この詩が書かれたのは昭和50年代のことなので、もちろん関係ないのですが。

その場に行かなくても、花が咲いているのが見える。風が吹いているのが見える。
そんなふうに人間はできているのだと思います。
まして桜の名所は二度と行くことができない場所ではありません。
見たくて見たくてたまらないほど桜が好きな人なら、たくさんの桜を憶えているでしょう。
記憶の中の桜を見上げることが、人間はできるのだと思います。

写真はベランダのマーガレット・シンプリーコーラル


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