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2019.03.14

静夜のこと

今度の個展で「静夜Ⅱ」という新作をご覧いただきます。
以前私は「静夜」という名の万華鏡を作っていました。
今は作っていません。
なぜ作らなくなったかというと、オブジェクトを作るために使っていたエポキシが黄変していたことに気づいたからです。
薄い透明ガラスに雪の結晶を彫り、線を白く着色したものをコートするために、
エポキシの接着剤を塗布していたものが黄変しているのに気づいたのは、
作ってから10年以上たった時でした。
すべての「静夜」が変色しているわけではありませんが、
お買い上げ下さった方々には本当に申し訳ないことをしてしまいました。
けれども、あまりにもたくさん作ってしまって、しかも多くは北海道の存じ上げない方々のもとへ渡っていきましたので、どうすればいいのかわかりませんでした。
いえ、そうではありません。変色するようなオブジェクトを作ってしまったことがショックで、
そのことを誰にも言えずに、ただ「静夜」を作るのをやめてしまったのでした。
今でも「静夜」が一番好きだと言って下さる方もいらっしゃいます。ありがたいことです。
でも、その失敗はずっと胸の中で重く沈んでいて、
いつかお話ししなくてはいけないと思っていました。


万華鏡は歴史の浅いものですし、色々な試みをしながら新しいものを作らなくてはならないのですが、
もっともっと慎重にしなければいけなかったのだと今は痛感しています。
喜んで下さった方々を裏切るようなことがないように、考えて考えて作っていかなければならないと強く思っています。

「静夜」は8ポイント3ミラーで、雪と氷がキラキラと舞う万華鏡でした。
「静夜Ⅱ」は6ポイント2ミラー。ひっそりと閉じた景色です。
ふたつはまったく違う眺めなのですが、静かな雪の夜を想う気持ちは同じです。
「静夜」は名前のわりに賑やかな感じがしましたが、「静夜Ⅱ」は本当に静かな夜です。
記憶の中の雪の夜のような気もします。
私はⅡが好きです。

外観は真っ白いガラスのボディで、「静夜」と全く同じです。
個展にお越し下さったら、是非お手に取って覗いてみてください。

どうぞ、悪いところ、気になるところを教えてください。
他の万華鏡についても、もっとこうした方がいいよ、と教えてください。
自分一人のふたつの目では気づかないことを、教えてください。
心からお願い申し上げます。

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