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2016.09.28

金木犀の花の下

4年近くの闘病の後、去年夫は逝った。
医者だったからか、すべて淡々と受け入れ、淡々と仕事をし、
それでも一日でも長く生きようとした。

命の期限が切られてから、私たちは「いい感じに撮れたら遺影にしようね」と言って、
お互いの、特別な写真を撮るようになった。
結局遺影に使ったのは、田沢湖畔の蕎麦屋で撮った写真で、
葬儀の際には「とてもいい写真だ」とずいぶん褒められた。

良い夫だったとはとても言えないけれど、
遺影の笑顔は私だけを見ている。それが、まぁ、少し嬉しいかな。
でも歳月は誰の上にも平等に降る。
私はもう田沢湖畔の私ではない。
一日一日老いて、少し遠くまで来た。
もうあの時の私ではいられないのだ。

今日、息子の息子6歳が、金木犀の花の下で写真を撮ってくれた。
自分の自然な笑顔が嬉しくて、「明日死んだら、遺影にしてもらおう」と思っている。

「今朝窓を開けたら、今年初めての金木犀の香りがしたよ」
そう言うと、
「俺は食い物の匂いしかわからん」と夫は言った。
本当にわからなかったのかなぁ…

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